孫正義氏が成しえない意外な夢 売れない画家になるのが夢? [スマホ]
人生における、成功とは何だろう?成功と幸せの関係は、どんなものなのだろう?
夢は、実現しないよりは成し遂げるほうがいい。ただ、どんな成功者でも、じんわりと心にしみわたるような幸せを感じるためには、絶妙な心のバランスが必要なようだ。
よく知られた笑い話の一つに、アメリカ人が南の島に最新の船をセールスしに行くというものがある。男は、その船を使えば今までの何十倍も魚がとれると力説する。
「そんなにとっても、食べ切れない」と島の人が断ると、「余った魚は売ればいい」とセールスマン。「売ってどうする?」「お金が儲かる」「金持ちになってどうする?」「バカンスに行って、南の島の浜辺でのんびりできるぞ」。
そこまで聞いて、島の人はあきれたように肩をすくめた。「私たち、今まさに南の島の浜辺でのんびりしているんだけれど」。
心のゆとりや、余裕を得るために働くという考え方がある。お金があれば、自由に生きることができると青年は考える。
しかし、本当は、そんなに働かなくても、自由はもともと手にしているのかもしれない。必死になって成功して、やっと余裕ができる。それは、ある見方をすれば、一周して「ふり出し」に戻ったということなのかもしれない。
孫正義さんにお会いしたとき、その着想と行動の力が非凡だと感じた。
高校1年の夏にアメリカに行き、「来るしかない」と屈指の進学校を退学し、そのままアメリカに渡ってしまった孫正義さん。そこから、がむしゃらに勉強して、大学に編入し、IT起業家への道をまっしぐらに進んでいく。
世間では、孫さんはとにかくエネルギッシュで力強い人というイメージがあるだろう。もちろんその通りであるが、私は少し違った側面にも注目している。
孫さんのオフィスを訪ねたとき、たまたま私の弟子が一緒にいた。孫さんに、「こいつ、東京藝術大学に4浪して入って、今は売れない画家をしているんです」と言うと、孫さんは目を輝かせて、「売れない画家になるのが、僕の夢なんです!」とおっしゃった。
孫さんにそんな夢があったとは意外だが、いずれにせよ、私の弟子は、天下の孫正義さんの「夢」を、もうすでに実現してしまっていることになった。何しろ、売れない画家なのだから!
そんなことを言うと、孫正義さんは大声で笑われた。その表情が、素敵だった。
もちろんあくまでも冗談であるが、そのようなユーモアのセンスを持っているところが、孫正義さんの成功の秘密の一つなのではないかと思う。
人間の脳は不思議なもので、がんばれる人は、言わなくても自然に努力する。一方、ガンバレ!といくら言われても、どうしても体が動かないということもある。
集中して時を忘れる「フロー」の状態では、がんばっていることは実は嬉しいこと、楽なことである。がんばるということは、決して無理をするということではない。
お目にかかったとき、孫さんは、「人工知能に興味がある」とおっしゃっていたが、言葉通り、感情を理解するロボットを発表するなど、着実に事業を進めていらっしゃる。
孫さんががんばれる秘密は、あれほど成功しても、「夢は売れない画家なんです」と言う、そのバランス感覚にあるのではないかと思う。
どんなに忙しい日常でも、心のどこかに「南の島」がある。そんな心のバランスが、がんばれる人をつくるのだ。
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